読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

橋本順一の哲学

芸術、科学、哲学、政治、経済、健康、恋愛、娯楽など、様々な分野において、思いついたことを綴る「ひらめきエッセイ」です。

北風戦術と太陽戦術

 人間が人間に与える影響力とは、まさにイソップ童話『北風と太陽』における、❝北風戦術❞に基づくものが、圧倒的に多いんじゃないでしょうか。

すなわち、ほとんどの人は、独り善がりの働きかけを強引にやろううとして、失敗してしまうのです。だから、後で苦しむことになります。

 

 自然の摂理に逆らったやり方では、うまくいかないんですね。

 

 一方、❝太陽戦術❞に則ったやり方なら、結構すんなりと成功するのではありますまいか。

 人間は、太陽にギンギンに照らされると、暑苦しくて暑苦しくてしょうがなくなります。

 だから、その苦しさから逃れ、「ラク」になろうとします。

 それゆえ、太陽から陽射しを浴びた旅人は、あっさりとコートを脱ぎます。

 これで、太陽の目論見は達成されたことになるのです。

 

 ここから導かれる原則は、人に「ラク」をさせる、ズボラにさせる、そういうやり方にのみ、他者を動かす力がある、ということです。

 

 ところが、❝北風戦術❞は、人に対し、「苦」しか与えません。

 一見、強力な風圧で旅人が着ているコートも吹き飛ばせそうにも思えるけれど、旅人にとっては、コートを脱がされることは更なる「苦」を呼び込むだけであるから、必死で抵抗し続けることになります。

 ゆえに、北風の思惑通りの成果は得られません。

 

 「苦」を吹きつける❝北風戦術❞ではなく、「ラク」を浴びせかける❝太陽戦術❞じゃないと、人を動かすことはできないのです。 

 

 天才画家ゴッホは、あまりにも能力が高く、あまりにもエネルギーの大きい人物でした。そういう意味では、彼は「北風」でした。

 いくらその天才的で強烈なエネルギー(北風)を人々にぶつけてみても、人々にとってそれは厳しい寒さでしかありません。

 「苦」でしかない。

 だから、ますます❝コート❞で固く身を閉ざし、内に閉じ籠もり、天才の作品世界に歩み寄ろうとはしなくなる。

 それゆえ、彼は生前では評価されなかったのだと思います。

 

 人に評価され、人を望む方向へ動かすには、「ラク」をさせる、手抜きさせる、ズボラにさせる、そういうような働きかけじゃないと駄目なのですね。

 

 これはもはや、鉄則中の鉄則であります。