橋本順一の哲学

芸術、科学、哲学、政治、経済、健康、恋愛、娯楽など、様々な分野において、思いついたことを綴る「ひらめきエッセイ」です。

「0」と「1」の間には無限の開きがある

 人間には「無」から「有」を作り出すことはできません。

 

 それはどんな天才科学者であろうと、どんな天才芸術家であろうと、同じ。

 

 ところで、「芸術」の定義に関する議論で、「芸術とは芸術家の主観の表れ以外の何ものでもない」とする主観絶対論の考え方が、依然として根強いようです。

 

 でも、「無」から「有」は作れないんです。

 

 もしも芸術家の頭の中に浮かんだイメージだけですべての芸術作品が出来しまうのであれば、それは「無から有を作れる」ということになってしまいます。

 つまり、世の中からすべての物質が仮に消滅したとしても芸術家の頭の中だけは依然として絶対的なイメージが残っている、ということを意味します。

 

 しかし、この世には絶対的なものなど何ひとつ存在しないのだから、芸術家の頭の中のイメージだって、周囲の人やモノなどとの間の関係性のなかでしか生まれてこないものなのです。

 

 したがって、芸術家の頭の中のイメージというものは、周囲の状況との兼ね合いでいかようにも変わりうる相対的なものである、ということになりましょう。

 

 それは揺れ動くものなのです。

 

 「0」と「1」の間は、一見、僅かなひらきしかないようにも思えます。

 しかし、「無」から「有」を生み出すことができない以上、主観からいきなり「1」を作り出せると捉える主観絶対論の立場から芸術を定義するのは、妥当ではありません。

 

 「主観」は「客観」に従属するのですから。

 

 「自然」がまずあって、それに「主観」が従属するのであり、つまりそれは、「自然の模倣」ということになるのです。