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橋本順一の哲学

芸術、科学、哲学、政治、経済、健康、恋愛、娯楽など、様々な分野において、思いついたことを綴る「ひらめきエッセイ」です。

二百ご十円です。

 数年前のことです。私は当時、東京に住んでいたのだけれど、或る時、そこから京都まで、自転車で旅行しようと思い立ちました。

 東京から京都までは、片道でおよそ500Km、往復だと1000Kmの距離があります。

 それを8日間(7泊)かけて、チャリンコで走破しようというのが、その旅のプランでした。

 もちろん、私一人だけで赴く旅行です(そんな無茶苦茶な計画に誰かを付き合わせるわけにはいきませんからね)。

 見知らぬ土地を長距離サイクリングすることには多少のリスクが伴うので、ちょっぴり不安もあったのだけれど、夏の或る日、ついに旅の楽しみのほうが勝り、強引に出発することにしたのでした。


 移動に使った自転車は、過去記事でもご紹介したことのある“赤毛のアン2号”です。
 
 それに乗り、僅かな着替えと食糧をリュックに詰めて背負い、東京をあとにしたのでした。


 多摩川を越え、大学や高層マンションなどがたくさん集まる新興の丘陵(ていうか山地)タウンを抜け、海を目指します。
 そして、相模原市を経て平塚市に入り、ひたすら南下すれば、もうそこは海です。

 
 波打ち際の白い水しぶきが、目に入ってきました。




 ♪ あ~れ~から、十~年も~




 って感じ。


 そこからは、西を目指して、国道1号線をまっすぐ進めばいいだけ。行程そのものは、きわめてシンプル。


 そんなふうにして、海沿いを走行していき、やがて小田原市に差し掛かってきました。

 この時点で、日没タイムでした。

 それでも、構わず先へ進み、箱根の山を突っ切っていきました。

 “赤毛のアン2号”は、無印良品さんのオリジナルモデルの白い自転車なんですけれど、頑張れば箱根の山でも越えられるもんなんですよ。

 なかなかそうする人もいないでしょうけど(笑)。

 しかも、夜道を一人で、長距離・長時間、登り続けるのです。

 それで、ぜんぜん寂しくないんですよ。
 なぜなら、ちょっとやんちゃな感じのバイクチームの方々が、時々走り去っていきましたからね。
 ほら、よくいらっしゃるじゃないですか、エンジン音がスペシャルなタイプの方々が(笑)。

 20台くらいいたかな。で、こっちは、一人旅なわけですよ。

 ちょっぴり心細いじゃないですか。

 だから、それへの対処として(力を誇示するために)、こうしたのでした。


 「絶対、自転車から降りないぞ!」って決めて、そのまま坂道を登りきる。


 これですね。


 なんて大人なんでしょう(笑)。

 おかげで、思っていたより早く、箱根を越えちゃいましたね。
 それも無印良品の自転車で。


 さて、そのあとは、沼津市で1泊して、翌朝からまた、サイクリングの旅です。


 広大な緑の平野部、大工場地帯、海沿いの断崖ルート、大都会、浜名湖畔、鈴鹿峠などのスポットを数日間かけて通り抜け、ついに、出発後4日目にして、京都(山科区)に入ったのでした。



 

 夏の陽射しが、照りつけていました。





 そこは盆地に開けた新しい宅地でした。
 デパートがあり商店街が広がっていて、周囲を見渡すと、標高の低い、緑の眩しい山々が連なっており、はんなりした感じの、“ザ・京都”な印象を受けました。


 それで、街ゆく若者たちのファッションレベルが、おしなべて高かったです。

 オシャレな人が多かったと思います。



 それでですね、ちょうどランチどきだったので、軽めの昼食を買うべく、近くのコンビニに入ったんですけれどね。


 お会計のとき、レジの店員さん(若い女性)が、京都の言葉で、こう言ったのでした。










 

「二百十円です。」














 うおおおおおおおおおおおーーーーーーーー!





 にひゃくじゅうえんだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!










 「にひゃくごじゅうえん」じゃあないんですね。


 「にひゃくじゅうえん」なんですよ。


 

 イントネーションが違うわけです。





 私は、思いっきり関東の人間なので、京都弁を使われると、なんとも上品で、オシャレな感じに聞こえてしまうんですよね~。




 めっちゃ感動しました。





 さらに、彼女が、こう訊いてきたのでした。












 「くろはお分けしますか?」










 




 うおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーー!







 「くろ」だああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!








 「ふくろ」じゃあないんですね。



 
 「くろ」なんですね。



 

 私もついつい、はしゃいじゃって、こう返してしまいました。













 「そうですね、私も前々から思っていたことなんですけれど、お分けしていただきたいものの一つに・・・」














 店員さんが、こちらを見つめます。















 「・・・くろがあります。」








 よっしゃああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーー! 




 「くろ」って言えたあぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!









 ボキャブラリーがまた一つ豊かになった、みたいな(笑)。




 レパートリーがまた一つ増えたぞ、みたいな(笑)。







 楽しかったです。






 さて、そのあとは、京都市内を自転車で一回りして、宇治へ行って世界遺産を観光し、そこで一夜を明かしたのち、帰路についたのでした。


 8日目でちゃんと東京に帰ってこれました。




 往復1000Kmサイクリング・ツアーは、こうして幕を閉じたのでした。




 楽しかったし、感性がインスパイアされたし、いい経験になったのだけれど、ただ、履いていたジーンズが破けちゃいました。

 てへっ。

 それから、なんと、自転車が全体的に損傷してしまったのでした。ボロボロにね。




 やがて、のちに、この“赤毛のアン2号”は、廃車になったのであります。





 長い間、お疲れさまでした。







 ありがとう。





 そして、







 さようなら。



 





 何の話やねん。





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 以上でございます!

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